良い施策なのに不採用?マーケターの運命を分ける「提案・翻訳力」の極意

どうも!小川です。

10月も下旬に入り、朝晩はすっかり冷え込むようになってきましたね。
秋は読書の秋、学びの秋と言われますが、
みなさんの現場のマーケティング施策は順調に進んでいますでしょうか?

さて、今日はマーケティングの現場で働く人なら、
一度は絶対にぶつかったことがある
ある切実な悩みについてお話ししたいと思います。

突然ですが、みなさんはこれまでに、
こんな悔しい経験をしたことはありませんか?

競合を徹底的に分析し、ターゲットのニーズを深掘りして、
自分でも「これは絶対に成果が出る!」と
確信できる最高のマーケティングプランを作り上げた。

なのに……経営陣やクライアントへの提案プレゼンで
「で、結局いくら儲かるの?」「難しくてよく分からないから一旦検討ね」
と一蹴され、企画がお蔵入りになってしまった……

……どうでしょうか。
読んでいて「うわ、まさに先週の自分のことだ……」
と感じた方、多いのではないでしょうか。

実は僕自身も、かつてまったく同じ苦い経験を何度もしてきました。

徹夜して膨大な市場データを集め、デザインの綺麗なスライドを作り、
「完璧な施策だ!」と意気込んで提案の場に臨んだのに、
相手の反応は冷ややか。結局、不採用で採用ゼロ。

当時の僕は、自分の力不足を棚に上げて、
心の中でこんな風に他人のせいにしていました。

「なんでこの施策の素晴らしさが理解できないんだ?」
「相手のマーケティングリテラシーが低いからだ」

でも、今ならはっきり言えます。

企画が不採用になったのは、施策が悪かったからでも、
相手の理解力が低かったからでもありません。
僕に「提案力」——つまり、相手の言葉に翻訳して納得させ、
組織を動かす力が決定的に足りなかったからです。

どれだけ素晴らしいマーケティング施策も、
相手に伝わり、採用され、実行に移されなければ成果ゼロです。
アイデアのまま消えていく施策は、存在しないのと同じなんです。

今日は、マーケターが単なる作業者を脱し、
組織やクライアントを動かすキーマンになるために
絶対に必要な提案力と翻訳の技術について、
現場の生々しいリアルを交えながらじっくりお話ししていきます。

マーケターとしてのキャリアを大きく変える
きっかけになる内容になっていますので、
ぜひ温かいコーヒーでも飲みながら、最後までお付き合いください。

マーケターが陥る完璧なプランの罠

世の中のマーケターが陥りがちな最大の罠。
それは、マーケターとして正しい答え(施策)を出せば、
提案は通るという思い込みです。

  • 「最新のGA4データに基づき、コンバージョン率が最も高い訪問ルートを割り出しました」
  • 「競合のSEOキーワードを徹底分析し、ドメインパワーを高めるためのトピッククラスタ構造を設計しました」
  • 「CPA(顧客獲得単価)を1,500円下げるために、TikTok広告のショート動画運用を開始すべきです」

これらは、マーケターの視点から見れば
100点満点のロジックであり、正しい施策かもしれません。
しかし、これを聞いた決裁者(社長、役員、クライアントの事業責任者)
の脳内はどうなっているでしょうか?

「……で? それをやると、うちの今期の売上はいくら増えるの?」
「GA4? トピッククラスタ? なんか難しそうなカタカナばっかりでよく分からん」
「リスクはないの? 失敗したら誰が責任取るの?」

ここに、マーケターと決裁者の間の巨大な溝が存在します。

マーケターは手段やマーケティング上の正しさに意識が向いています。
一方で、決裁者が気になっているのは
事業成果や投資対効果、そしてリスクだけです。

優秀なマーケターほど、自分が苦労して作った施策に愛着が湧くため、
提案の場で「どれだけこの施策が最新で素晴らしいか」を語ってしまいます。

しかし相手からすれば、例えばどんなに素晴らしいエンジン(施策)でも、
この車(事業)が目的地(売上目標)に届くイメージが湧かなければ買わないのです。

どれだけ素晴らしいマーケ施策も、相手に伝わらなければ不採用。
言い換えれば、採用されない施策は存在しないのと同じなんです。

専門用語という「壁」—相手のビジネス言語に翻訳できるか

では、どうすれば決裁者に
「よし、それやろう!」と言わせることができるのでしょうか?

その第一歩にして最も重要な技術が、相手のビジネス言語への翻訳です。

マーケティングの現場には、専門用語があふれています。
CPA、LTV、ROAS、CTR、CVR、エンゲージメント、
ファネル、SEO、AIO、カスタマージャーニー……。

僕たちマーケターにとっては息をするように使う言葉ですが、
一歩マーケティング部門の外に出れば、これらはすべて呪文です。
相手からすると、外国語を聞かされているのと変わりません。

人間は、理解できないものに対して恐怖や不信感を抱きます。
どれだけロジカルに説明されていても、
知らない専門用語が3つ以上入ってきた時点で、
相手の脳のシャッターはガラガラと下りてしまうのです。

ここで、実際のダメな提案(翻訳なし)と
通る提案(翻訳あり)の比較を見てみましょう。

✖ダメな提案(マーケター言語のまま)

「現在、WebサイトのCVR(コンバージョン率)が1.2%と停滞しています。
 主な原因はフォーム離脱率の高さです。
 そこで、EFO(入力フォーム最適化)ツールを導入し、
 さらにマイクロコンバージョンとして資料請求の前に『簡易診断』を挟むことで、
 全体のリード獲得数を150%に改善します。初期費用は50万円、月額5万円です。」

マーケター同士ならこれで通じるかもしれません。
しかし、社長にこれを言うと
「EFO? マイクロコンバージョン?
専門用語で煙に巻いて高いツールを買わせようとしていないか?」
と警戒されます。

では、これを社長のビジネス言語(経営言語)に翻訳してみましょう。

〇通る提案(相手の言語に翻訳)

「社長、現在うちのホームページには
 毎月10,000人の見込み客が訪れていますが、お問合せに至ったのは120人だけです。
 実に9,880人(全体の約99%)のお客様を、入口でそのまま帰してしまっている状態です。
 調査したところ、一番の理由は
 『問合せフォームの入力項目が多すぎて、途中で面倒になって諦めていること』でした。
 そこで今回、入力の手間を半分以下にする改修を行いたいと考えています。
 費用は初期50万円かかりますが、これによって毎月のお問合せが120人から180人へ、
 年間で720人の商談チャンスが増える計算になります。
 営業の成約率が10%とすると、年間で72件の受注増、金額にして約720万円の粗利アップが見込めます。
 50万円の投資に対して、1年で14倍以上のリターンが見込める計算ですが、
 試してみる価値はあると思われませんか?」

いかがでしょうか?

やろうとしている施策(EFO・フォーム改修)は全く同じです。
しかし、後者の提案では以下のような翻訳が行われています。

  1. 数字の視点を変える:「CVR 1.2%」ではなく「9,880人を帰している(機会損失の可視化)」
  2. マーケ用語を経営用語に変える:「リード数150%」ではなく「年間72件の受注、720万円の粗利増」

マーケターに必要なのは、難しい概念を
専門用語で語る格好よさではありません。
難しい概念を、小学生でも情景が浮かぶくらい
噛み砕いて伝える翻訳力なのです。

ヒアリングなしに刺さる提案は作れない

ここまでの話を聞いて、
「なるほど、相手の言葉に翻訳してプレゼンすればいいんだな!」と思った方。
実は、まだ半分です。

どれだけ完璧なプレゼンスライドを作り、
素晴らしい言葉で翻訳しても、
提案が通らないことがあります。 なぜか?

それは、相手が本当に解決したい課題(裏のニーズ)を外しているからです。

提案が下手なマーケターは、ヒアリングの時間を
「自分の提案を通すためのアリバイ作り」だと思っています。
自分の聞きたいことだけを質問し、相手が答えると
「わかりました! では提案書を作ってきます!」と持ち帰ってしまう。

しかし、成果を出し続けるトップマーケターは違います。
提案の成否は、プレゼン当日ではなく
事前のヒアリングの段階で8割決まっていることを知っているからです。

ヒアリングで聞き出すべきは、
表面的な予算や納期や目標数値だけではありません。
相手の感情と本当の関心事です。

具体的には、ヒアリングの現場で以下の3つの裏質問を投げかけてみてください。

1. 「今回の施策で、一番『絶対に避けたい最悪のシナリオ』は何ですか?」

例:予算オーバー? 社内からの批判? 現場の営業からのクレーム? 既存顧客の離脱?
⇒ 人間は得をすることよりも、損を避けることに強いモチベーションを感じます。
  相手が何を恐れているかを知ることで、
  提案書の中にそのリスクを回避する防壁をあらかじめ組み込むことができます。

2. 「もしこの施策が成功したら、○○さんにとって一番嬉しい変化は何ですか?」

例:売上アップ? 残業削減? 役員会での評価? 現場の笑顔?
⇒ 相手の個人的なインセンティブ(モチベーション)を探ります。
  法人の意思決定と言っても、最後は個人の感情です。
  相手が「自分の評価が上がる」「仕事が楽になる」と思える未来を見せてあげることが不可欠です。

3. 「過去に外部のマーケティング施策で『失敗したな』と思った経験はありますか?」

⇒ これを聞くことで、相手のトラウマが分かります。
 「過去にコンサルに頼んだけど、レポートばかりで現場が動かなかった」
  というトラウマがあるなら、
 「今回はレポートだけでなく、現場のオペレーション構築まで伴走します」
  という提案が劇的に刺さるようになります。

プレゼンテーションとは、こちらからの一方的な発表ではありません。
事前ヒアリングで集めた「相手の悩み」「恐れ」「望み」というパズルを組み合わせて、
「あなたの悩みを解決する答えは、ここに用意しましたよ」
と提示する答え合わせの作業なのです。

マーケターの価値は人を動かした数で決まる

長年マーケティング業界に身を置いていて、
つくづく思うことがあります。

それは、「マーケティングの知識が豊富な人」と
「マーケティングで成果を出せる人」は全く違うということです。

知識が豊富な人は、最新のフレームワークを知り、
美しい分析レポートを作り、画期的な施策を思いつきます。
しかし、提案力がなければ、その施策は誰にも採用されず、
パソコンのフォルダの中で静かに眠り続けることになります。

一方で、成果を出すマーケターは違います。
たとえ思いついた施策がシンプルで古典的なものであっても、
関係者に泥臭くヒアリングをし、専門用語をかみ砕いて説明し、
情熱を持って組織を動かし、施策を実行まで泥臭くやり切ります。

結果として、組織を動かした人だけが、
リアルな成果を手にすることができるのです。

Webマーケティングの世界は今、冒頭でもお話しした通り、
AI(AIOなど)の進化によって激変しています。
AIを使えば、誰でも一瞬で一般的なマーケティング施策のアイデア
を出せる時代になりました。

つまり、「良い施策を思いつく力」そのものの価値は、
どんどん下がっているのです。

では、AI時代に僕たち人間に求められる本当の価値とは何でしょうか?

それこそが、今回お話しした提案力です。

人間関係のドロドロとした利害関係を調整し、
言葉の壁を乗り越えて専門用語を相手の言語に翻訳し、
不安を抱える決裁者の背中をそっと押し、
「よし、あなたの言うことなら信じて賭けてみよう!」
と相手の心を動かす力。

これだけは、どれだけAIが進化しても絶対に代替できません。
マーケターの本当の価値は、どれだけ難しい知識を知っているかではありません。
自分の言葉で、どれだけの人を巻き込み、動かしたかです。

あなたの提案を翻訳してみよう!

最後に、今回のメルマガの締めくくりとして、
みなさんに小さなワークをご提案させてください。

今、あなたが抱えているマーケティング施策、
あるいは社内やクライアントに提案しようとしている
プランを一つ思い浮かべてみてください。

そして、以下の問いに答えてみてください。

  1. その施策を、専門用語を一切使わずに
    中学生でも分かるたとえ話で説明するとしたら、どう表現しますか?
  2. その施策が成功した時、相手にとって一番嬉しい
    ビジネス上のメリット(利益、削減できる時間など)は何ですか?

もし「あれ、専門用語を使わずに説明しようとすると、上手く言葉が出てこないな……」
と感じたら、それはチャンスです。
あなたの提案がさらにブラッシュアップされ、
採用率が跳ね上がる伸び代がそこにあるということです。

ぜひ、ノートやメモ帳に書き出してみてください。

提案力と翻訳力を身につければ、
あなたのマーケターとしてのキャリアは間違いなく一段上のステージへ上がります。

自分の考えた大好きな施策が、組織に採用され、現場で動き出し、
大きな成果となって返ってくる。
あの最高の瞬間を、ぜひみなさんにも味わってほしいと思っています。
今週も一歩一歩、泥臭く現場でアウトプットしていきましょう!


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