商品を変えずに売上を伸ばす見せ方の“魔法”とは?

どうも!小川です。

街を歩けばあちこちでカボチャの装飾や
オレンジ色のディスプレイを見かけるようになりましたね。
そう、今月末はハロウィンです。

さて、みなさんは最近、ハロウィンの関連商品や
イベントの盛り上がりを見て、
ふと疑問に思ったことはありませんか?

なぜ、もともと日本になかった海外の行事が、
ここ10〜20年でこれほど巨大な経済効果を生む
一大イベントに化けたのか?

実は、日本におけるハロウィン市場の規模は、
最盛期には1,300億円超にまで膨れ上がり、
あのバレンタインデーに匹敵・あるいは
凌駕するレベルの巨大市場へと成長しました。

でも、ちょっと冷めた目で見つめてみてください。
ハロウィンの時期に売られているお菓子やグッズって、
中身そのものは普段売られているものと何か違うのでしょうか?

チョコレートは普通のチョコレートです。
クッキーも、せんべいも、普段と同じ工場で作られています。
パッケージをカボチャ柄に変えて、
「ハロウィン限定パック!」と銘打っているだけですよね。

それなのに、なぜ僕たちは普段なら見過ごすようなお菓子を、
ハロウィンの時期になるとついで買いしたり、
パーティー用にまとめ買いしたりしてしまうのか?

ここに、僕たちマーケターや事業者が喉から手が出るほど欲しい
商品を変えずに売上を爆発的に伸ばす、
見せ方の魔法の秘密が隠されています。

今日は、商品開発に何百万円も投資したり、
一から新しいサービスを作ったりすることなく、
切り口と文脈を変えるだけで既存商品の価値を
数倍に跳ね上げるコンセプトメイキングの技術について、
徹底的に深掘りしてお話ししていきます!

今、自社商品の売上に伸び悩んでいる方、
新規商品の開発予算がなくて困っている方には、
間違いなくブレイクスルーのヒントになるはずです。

今回も濃い内容でお届けしますので、
ぜひ最後までじっくりとお付き合いください!

ハロウィンはなぜお菓子業界の救世主になれたのか?

まず、ハロウィンが日本でここまで爆発的に普及した
本当の理由から解剖していきましょう。

もともとハロウィンは、
古代ケルト人が起源とされる秋の収穫感謝祭であり、
悪霊払いの宗教的な行事でした。
アメリカでは子どもたちが
「Trick or Treat!(お菓子をくれないと悪戯するぞ)」
と言って近所の家を練り歩き、
お菓子をもらう風習として定着しています。

もし、日本のマーケターがこの文化を
そのまま直輸入していたらどうなっていたでしょうか?

「子どもたちが近所の家を突撃訪問してお菓子をもらう行事です!」

……日本の住宅事情や防犯意識、
ご近所付き合いの希薄さを考えると、絶対に定着しませんよね(笑)。

人様の家を突然訪ねて「お菓子くれ」なんて言ったら、
今の時代、通報されかねません。

では、日本のマーケティング業界(テーマパークや食品メーカーなど)は何をしたのか?

彼らがやったのは、
日本の市場に合わせたコンセプトの再定義です。

  1. 「子どもがお菓子をもらう日」から「大人が仮装して非日常を楽しむ日」へシフト
     ⇒ ターゲットを「子ども」から「購買力のある若者・大人」へと一気に拡張しました。
  2. 「ご近所まわり」から「SNSでの映え・共感の場」へシフト
        ⇒ 仮装して街に出たり、パーティーで写真を撮ってSNSにアップするという
        「自己表現と共有の機会」として意味付け直しました。
  3. お菓子を「子どものおやつ」から「コミュニケーションの小道具」へシフト
        ⇒ 「友達や同僚に配って会話のきっかけを作る配り菓子」という新しい価値を付加しました。

ここが最大のポイントです。

メーカーは新しいお菓子を作ったわけではありません。
既存のポテトチップスやクッキーの袋を大容量の個包装にし、
パッケージをオレンジ色にして「みんなで配ろう!」
という新しい切り口に乗せて売っただけなのです。

お菓子そのものを買わせているのではなく、
ハロウィンというお祭り騒ぎに参加するための
チケットとして買われている。

これこそが、商品を変えずに売上を何倍にも伸ばす
コンテキストの掛け合わせの正体です。

売れない原因の9割は商品ではなく「切り口」にある

このハロウィンの事例から、僕たちが学ぶべき教訓は何でしょうか?

それは、商品が売れないとき、真っ先に疑うべきは
商品の品質ではなく見せ方・切り口であるということです。

真面目な事業者やマーケターほど、
商品が売れなくなるとすぐにこう考えます。

  • 「もっと機能を増やしてバージョンアップしよう」
  • 「デザインを今風にリニューアルしよう」
  • 「価格が高いのかもしれないから、20%値下げしよう」

しかし、これは多くの場合、間違ったアプローチです。

なぜなら、現代の日本には粗悪な商品なんてほとんど存在しないからです。
どの会社の商品もクオリティが高く、機能も十分。

そんな時代に、機能を10%良くしたところで、
消費者の心には1ミリも刺さりません。

売れない理由のほとんどは、商品が悪いからではなく、
その商品が自分にとってなぜ必要なのか、顧客がピンとときていないから、
つまり、切り口がズレているからなんです。

ここで、実際に商品そのものは変えず、
見せ方を変えて大ヒットした実際の事例をご紹介します。

みなさんもよく知っている、「ワークマン」の例です。

ワークマンはもともと、
建設現場などで働くプロの職人さん向けに
丈夫で機能的な作業服を販売する専門チェーンでした。

彼らが作った商品は、防寒性、防水性、耐久性が抜群で、価格も手頃。
職人さんたちからは絶大な信頼を得ていましたが、
一般的な消費者(特に女性や若者)からは
「作業服の店でしょ? 自分には関係ない」と見向きもされていませんでした。

そこで彼らが何をしたかというと、服の機能や製法、
コストパフォーマンスはそのままに、
ターゲットと見せ方をガラリと変えたのです。

  1. ターゲットの変更:プロの職人 ➜ アウトドアを楽しむ一般客や子育て世代の女性
  2. 利用シーンの変更:工事現場 ➜ キャンプ、バイク、雨の日の送迎や買い物
  3. 見せ方(店舗・打ち出し)の変更:作業着売り場 ➜ 高機能×低価格でおしゃれなカジュアルウェア(ワークマン女子)

商品自体は、もともと現場作業用に開発された高性能な服です。
しかし、作業着という文脈からおしゃれで機能的な
アウトドア・日常着という文脈に置き換えた途端、
これまで店舗に足を踏み入れなかった女性やファミリー層が殺到し、
売上が爆発的に伸びて社会現象にまでなりました。

商品を変えずにコンセプトを再構築する「4つの切り口」

「言いたいことは分かりました。
 でも、自社商品でどうやってその『切り口』を見つければいいんですか?」

そう思われた方のために、既存商品のコンセプトをガラリと変えて、
新しい価値を生み出すための4つの切り口のフレームワークをご紹介します。

あなたの会社の商品やサービスを頭に浮かべながら、
以下の4つの質問を投げかけてみてください。

切り口1:ターゲット(誰に)を変える

商品そのものは同じでも、届ける相手を変えるだけで市場がガラリと変わります。

  • 事例:作業服のワークマン⇒プロの職人向けに作っていた高機能・低価格の作業着を、
       アウトドアや子育てを楽しむ一般女性へターゲットを変更。機能はそのままに安くて可愛い防寒着・レインウェアの様な「ワークマン女子」として爆発的ヒットを生みました。
  • 自社への問い: 今売っている相手とは「まったく異なる業界」の人に、この商品はどう役立つだろうか?

切り口2:利用シーン(いつ・どこで)を変える

顧客がその商品を使う場面やタイミングをズラしてみます。

  • 事例: ワンダ モーニングショット⇒「仕事の合間の休憩」や「ホッと一息つきたいリラックスタイム」
       に飲まれるのが主流だった缶コーヒー市場の中で、
       あえて「朝、目覚めのスイッチを入れる」という時間帯に特化。
       「朝専用缶コーヒー」という独自の立ち位置を確立し、新しい習慣と需要を開拓しました。
  • 自社への問い: 顧客がこの商品を使う時間帯や場所を、あえて真逆や特定のタイミングにズラしてみたら、
           どんな新しいストーリーや習慣が生まれるか?

切り口3:用途・目的(何のために)を変える

顧客がその商品を購入する本来の目的とは別の価値を提示します。

  • 事例:シーチキン ⇒「お弁当のスキマ埋め」「非常用の備蓄食」
       料理の具材として売るだけでなく、「防災用の保存食」や「筋トレ中のタンパク質補給」
       という目的を提示することで、買い置き需要を掘り起こしました。
  • 自社への問い: この商品は、本来の目的以外にどんな悩みの解消やどんな感情の満たしに使えるだろうか?

切り口4:対比・競合(何と比べて)を変える

比較する相手を変えることで、商品の立ち位置を再定義します。

  • 事例:高級栄養ドリンク ⇒1本1,000円の栄養美容ドリンクを、「100円の缶コーヒー」
       と比べられると「高い!」と感じられます。しかし、
       「1回15,000円のエステに行く時間がない人のための、自宅でできる即効ケア」と比較させると、
       「1,000円ならめちゃくちゃ安い!」と感じられます。
  • 自社への問い: この商品を普段の競合ではなく、まったく別の高額な選択肢と比較させるとしたら、どんな提案ができるか?

顧客の頭の中の棚を書き換える言葉の定義

切り口が見つかったら、最後に必要なのが
言葉(キャッチコピー)への落とし込みです。

どれだけ素晴らしい新しい切り口を思いついても、
それを一瞬で理解できる言葉に変換できなければ、顧客には伝わりません。

ここで目指すべきは、顧客の頭の中にある分類棚を書き換えることです。

人間は、新しい情報に触れたとき、無意識に脳内の棚に分類しようとします。

例えば、あなたが社内業務を自動化する新しいITソフトを売り出したいとします。

普通に「日々の業務効率をアップさせるITソフトです!」と告知しても、
顧客(経営者や管理職)の脳内では出費・コスト(消耗品)の棚に分類されます。

出費・コストの棚に入ると、顧客はこう考えます。
「うーん、今でも手作業でなんとか回っているしな…」
「毎月システム利用料を払うのは勿論、新しいソフトを導入する出費は抑えたいな」

しかし、これを人件費カット・リスク回避(投資)の棚に書き換えてあげたらどうでしょうか?

  • ✖「月額3万円で始められる業務効率化ソフト」
      ⇒ 「毎月3万円もかかるのか、今のままでいいや…」
  • 〇「月100時間の残業と入力ミスをゼロにする『現場の退職・炎上防止』システム」
      ⇒ 「残業代や採用費、ミスの補填コストに比べたら月3万円なんて安すぎる!」

中身のソフトの機能や仕組みが全く同じであっても、
言葉の定義を変えて脳内の棚を書き換えるだけで、
顧客にとっての価値が180度変わるのです。

ハロウィンの例で言えば、お菓子メーカーはポテトチップスを
日常の小腹満たしの棚から、ハロウィンパーティーを盛り上げる小道具の棚へと
脳内分類を書き換えることに成功したわけです。

あなたの会社の商品は、顧客の頭の中の「どの棚」に入っていますか?
そして、それを「どの棚」に移動させてあげれば、
喉から手が出るほど欲しいと思われるでしょうか?

AI時代だからこそ文脈を作る人が勝つ

今は生成AIを使えば、誰でも一瞬で高精度な文章が書けたり、
綺麗なデザイン画像が作れたりする時代です。

しかし、AIには絶対にできないことがあります。

それは、世の中の空気感や人間の感情を読み取り、
既存の要素と要素を掛け合わせて新しい文脈を生み出すことです。

AIはハロウィンにお菓子が売れる理由を分析することができます。
しかし、日本の防犯事情やSNS文化を考慮して、
大人向けの仮装イベントとお配り用のお菓子を掛け合わせたらバカ売れするんじゃないか?
という狂気的なひらめきと文脈の創造は、人間にしかできません。

  • 機能やスペックの勝負は、すぐに競合に真似され、価格競争に巻き込まれます。
  • AIによる効率化は、誰もが同じツールを使うため、数年で差別化できなくなります。

だからこそ、これからのWebマーケターや事業者に求められる最大のスキルは、
商品そのものをこねくり回す力ではなく、
既存の商品に新しい光を当てて、魅力的な切り口を作る力なのです。

世の中に埋もれている素晴らしい商品に、
ちょっとした見せ方の魔法をかけてあげる。
それによって、今まで届かなかった人に商品が届き、
こういうのが欲しかったんだ!と喜んでもらえる。

マーケターとして、これほど面白く、
やりがいのある仕事はありませんよね。

こうやってシーンやイベントを絞り込むだけで、
一気に「自分のための商品だ!」と感じられるようになりませんか?

商品開発に巨額の資金を投じる前に、
まずは今ある商品の見せ方の魔法を磨いていきましょう。

それでは、今週も現場で楽しんでアウトプットしていきましょう!


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