P-MAXで変わる広告運用|リスティング広告との違いと運用の勝ち筋を解説

P-MAXで変わる広告運用|リスティング広告との違いと運用の勝ち筋を解説

数年前、Googleによって発表されたAI活用型の新キャンペーン「P-MAX」
広告業界では注目され始めていますが、しばしば対比されるリスティング広告と違い、
その本質を深く理解し、使いこなしている人はまだそれほど多くありません。

P-MAXは、これまで“当たり前”とされていた広告運用の手法を、
根本から塗り替える可能性を秘めています。

本記事では、そんなP-MAXの概要や設定項目を整理しつつ、従来のリスティング広告との違い
から見えてくる、広告運用の本質的な変化をひもといていきます。

広告運用に携わるなら、まだ普及しきっていない”今”だからこそ、
P-MAXについて詳しく学んでいきませんか?

この記事は特にこんな人に向けてよくわかるように書いています:

・リスティング広告の基礎はわかっているけど、P-MAXは未経験の人
・P-MAXという名前は知っているけれど、仕組みや違いをまだ理解していない人
・AI時代の広告運用について、実務視点で学びたい人

目次

P-MAXとは?|広告運用を最適化する新しいキャンペーン方式

まずはP-MAXの概要について確認しましょう。P-MAXはPerformance Maxの略で、
パフォーマンスの最大化を意味するGoogleの広告キャンペーンの一つです。

P-MAXは、AIを用いて広告運用の最適化を図ることを目的としたツールです。
その特徴は大きく2つに分けて説明されます。

配信先選びを自動化|Google広告の全ての広告枠に配信が可能

1つめの大きな特徴は、1つのキャンペーンでGoogle広告の様々な広告枠に
広告配信することができる点です。

これまでは、リスティング広告なら「検索」、YouTube広告なら「動画」のように
1キャンペーンに対し1つのキャンペーンタイプを選択して広告を選ぶ必要がありました。

キャンペーンの作成画面でP-MAXを選べば、検索・ディスプレイ・動画(YouTube)・Gmailなど、
あらゆる広告枠に自動で配信
される仕組みです。

広告運用の最適化|コンバージョンを高めるようにAIが運用

2つ目の特徴は広告運用の調整をAIが自動で行う点です。

広告の目的は、ご存じの通りコンバージョンを高めることにあります。
設定したコンバージョン目標に対し、P-MAXでは配信先の選定や入札が自動で調整されます。

ユーザーの動きをデータ化し、そこから傾向を学習することで、AIは「どの広告を、どのユーザーに、どのタイミングで出せば効果的か」を判断します。

これにより、配信や入札を自動で調整してくれるのです。

P-MAXの特徴|リスティング広告との決定的な違い

P-MAXがどんなキャンペーンなのかを簡単にご理解いただいたところで、
その特徴をもう少し深堀りしていきます。

既存のWeb広告の中でも主流であるリスティング広告との違いに目を当てると、
その違いがよくわかります。

リスティング広告の基本を知りたい方は以下の記事をどうぞ。
初心者にもわかりやすくリスティング広告の詳細が解説されています。

キーワードとマッチタイプ設定が不要

リスティング広告の運用において、どんなキーワード検索に対しどんな広告を表示させるのか
というキーワード設定が非常に重要なことは広告運用者の皆様ならよくご存じでしょう。

また、広告表示の精度やCV率に直結するマッチタイプの調整は、広告運用者の腕の見せ所でした。

P-MAXでは、これらの設定を行う必要がありません。

なぜなら、これらの設定はAIによって最適化され自動的に配信されるためです。

つまり、リスティング広告運用では重要だった広告運用の肝が、P-MAXの利用により広告運用者ごとの力量の差を埋めることが出来るようになるのです。

予算と入札の調整が不要

広告運用でもう一つ重要になるのが予算の振り分けです。キーワードごとのクリック単価と、
CV状況を加味して、予算を振るキーワードを考えるのがリスティング広告の醍醐味でした。

P-MAXでは、この作業も全く必要ありません。

P-MAXでは、1日の予算とCVの目標だけを設定すれば、自動的にCVを高めるように予算を振り分けて広告を配信できるのです。

CVを高める、という点については次の章でさらに詳しく解説します。

【コラム】よく似た言葉|リスティング広告とリスティンググループ

P-MAXについて調べてみるとリスティンググループという言葉が出てきます。
リスティング広告とは違うの?と思う方も少なくないので、ここでリスティンググループについても少し触れておきます。

リスティンググループとは後述するアセットグループの一つです。
一言でいえば「分類ごとの商品の一覧表」です。

Googleではオンラインショップの商品情報を登録・管理するためのツールとしてMerchant Centerを無料で提供しています。Merchant Centerに登録した商品は、Googleショッピングなどで表示させることができます。

Merchant Centerに登録した商品をグループ化する機能が、リスティンググループです。

例えば、ファッションなら「メンズ向け」と「レディース向け」や、「靴」と「洋服」などグループ分けすることでターゲットごとに広告キャンペーンを分けることができます。

つまり、リスティンググループを設定することで、商品と広告を一致させて配信することができるのです。P-MAXにおいて重要な機能となるので覚えておきましょう。

以上、リスティング広告との主要な違いについて解説しました。
以下に、要点を整理しておきます。

<リスティング広告とP-MAXの違いまとめ>

項目従来のリスティング広告P-MAX
入札戦略手動 or 自動設定完全自動(AI)
キーワード設定自分で選定不要
※オーディエンスシグナル
(AIへのターゲットヒント)で補う
配信先検索が中心検索・YouTube・Gmail・ディスプレイなど一括
細かな調整できるほぼできない(ブラックボックス)
必要な力運用スキル設計力・クリエイティブ力

表で見比べてみると、P-MAXが従来の運用手法とはまったく異なるアプローチで設計されていることがわかります。次章では、さらにP-MAXで重要となるコンバージョンの考え方について確認していきます。


この章を読んで、そもそもリスティング広告の基本から学び直さなきゃ…と思った方も少なくないはず。
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P-MAXにおけるCV最適化とは|CV設定の仕様と注意すべきポイント

P-MAXでも、広告運用の目的となるコンバージョン(CV)は自ら設定する必要があります。
しかし、意味は同じでも少しだけリスティング広告とは仕様が変わっているので注意が必要です。

リスティング広告との違いを理解した今、P-MAXにおけるCVの設定に関する考え方を理解していきましょう。

CVとCV値の違い|何を成果にするのかを決める

P-MAXの設定画面では、「CV(成果件数)」か「CV値(成果の金額)」のいずれかを最適化の対象として選べます。これは一体何を意味するのでしょうか。

CVはご存じの通り、ユーザーが特定のアクションを行った回数を示す指標です。
商品購入や資料請求などCTAをクリックした回数と理解しても良いでしょう。

対してCV値は、CVによる金銭的な価値を表します。広告経由で得られた売上の金額と言っても差し支えありません。理解を深めるために、以下に例を示します。


例)ある広告キャンペーンで、CV:100件とする。

①CVと購入が異なる場合
例えば資料請求をCVとして、そこから20%が購入に繋がるとします。1件の購入で10000円の商品とした場合、CV値=100×0.2×10,000=200,000となります。

CVと購入が一致しない場合でも、CV値は最終的にビジネスが生んだ価値を示すことができます。

②複数の商品購入がある場合
1つのキャンペーンにリスティンググループを設定することで複数の商品が広告表示されます。商品によって値段が異なるため、CV値が変わります。

例えば、1着5000円のトップスと、1着1000円のソックスが同じリスティンググループで広告配信されたとします。100件のCVの内、トップスとソックスがそれぞれ50件ずつCVしていたと仮定します。
・トップスのCV値=5000×50=250,000
・ソックスのCV値=1000×50=50,000
同じCV数でも商品によってCV値は異なるというわけです。

CV値の最適化を目指す設定とする場合、それぞれのCV値を踏まえ、キャンペーン全体の中でCV値を高めるように自動入札が働くことになります。


目標CPAの設定有無で何が変わるか

P-MAXの単価設定画面では、任意で目標コンバージョン単価(目標CPA)を設定することができます。これを設定することでどのように変わるのでしょうか?

注)CVを設定する場合は「目標CPA」、CV値を設定する場合は「目標広告費用対効果(ROAS)」をそれぞれ設定する形式となっています。

目標CPAや目標ROASを設定することで、その範囲内でCV/CV値を最大化するように広告配信されます。設定しない場合は、予算内で最大化を図ります。

つまり、

「CPAを一定に抑えて効率を重視するのか」
「CPAは気にせず成果の最大化を狙うのか」

という違いと捉えることができます。

目標CPAを設定すれば、獲得コストを抑える方向に最適化されるため、費用を押さえながら広告配信が可能となります。しかし、目標CPAを厳しすぎる金額にすると表示機会が極端に減って成果も出ないことになり得ます。

また、目標を設定しない方がAIの自由度が高く、学習が早くなる場合もあります。

これらを踏まえ、現時点で何を重視するのかで使い分けるようにしましょう。


<目標設定の有無とその違い>

設定内容最適化の方向性実質的な意味
目標設定あり設定目標の範囲内で配信最適化「単価優先」=CPA効率を重視する
目標設定なし予算内で成果を最大化「成果数優先」=CV件数を最大化する

顧客の獲得設定で新規の度合を調整

顧客の獲得設定の項目はチェックの有無で設定を切り替えることが出来ます。

デフォルトでは、新規顧客と既存顧客へのキャンペーンの入札単価が均等に設定されています。

しかし、商材や状況などによっては既存顧客への広告はそこまで必要ないというパターンもあり得ます。その場合は新規顧客向けの配信を強めた方がよいので、設定しましょう。

いくつか、設定した方がよいと考えられるパターンを例示しておきます。

<顧客の獲得設定をチェックするパターン>

・継続購入は想定しない商材(スクールなど)
・1回の単価が大きく、頻繁に利用しない商材(留学斡旋など)
・差別化が明確で既存顧客への広告を必要としない商材(ハイブランド品など)
・リマーケティング広告の成果が悪い場合(クリエイティブの修正も視野)

以上、P-MAXにおけるCVの考え方について解説しました。ここまでで、リスティング広告との違いをご理解いただけたかと思います。次章からはP-MAXを実際に設定する際の具体的なポイントを解説します。

P-MAX実践!3つの設定項目|予算・CV・アセットの基本理解

ここまでP-MAXが既存のリスティング広告とどのように異なるかを解説してきました。
ここからは実際に設定する上でポイントになる部分を解説します。

違いを理解しておくことで設定項目もスムーズに理解が進むはずです。

基本となる設定項目

P-MAXでは、広告運用者が設定できる項目は3つだけです。自由度が低いというデメリットとも捉えられますが、この3つに如何に注力するかがP-MAXの成功に繋がるとも言えます。

必ず確認しておきましょう。

予算設定の重要性

P-MAXでは、1日当たりの平均費用を予算として設定できます。
提示される候補から選択もできる他、カスタムで自由に設定することも可能です。

注意したいのは、予算はあくまでも平均であるということです。1日に使用した費用が設定した予算を超える場合もありますが、1か月の請求額から割り出した平均が予算を超えることはないように調整されます。

コンバージョン設定の戦略

コンバージョンについては先に記載した通りです。

・成果をCVとCV値のどちらで測定するのか
・目標となるCPAまたはROASを設定するのかどうか
・顧客の獲得設定で新規顧客と既存顧客どちらへのアプローチを優先するのか

この3点を決めます。自社の商材や状況にあった設定を行いましょう。

アセット(クリエイティブ)準備のポイント

アセットは広告の構成素材(クリエイティブ)のことです。
従来の広告と同じく、広告見出しと説明文が入力できる他、画像や動画などをアセットライブラリに
アップロードして、広告クリエイティブとして用いることができます。

また、2025年6月現在、Google AIによるアセット生成機能がβ版として利用できます。
今後はこちらを利用してクリエイティブの生成も簡単にできるようになることでしょう。

それぞれの設定項目については、事前に取り決めておきましょう。特に、設定できる項目が少ない分、アセットは自社の特色が最も出る部分です。時間をかけて準備しておきましょう。

オーディエンスシグナルと広告表示オプション

ここからは、基本設定に加えて知っておきたい追加の設定項目を解説します。
いずれもP-MAXの戦略設計に関わる重要ポイントで、使いこなせればP-MAX上級者といえるでしょう。

オーディエンスシグナル

オーディエンスシグナルは、AIに対し理想のターゲット像を伝えるヒントのようなものです。ただ、
従来のオーディエンス設定のように、そのターゲットに絞って配信をするというわけではありません。

従来のようなピンポイントのターゲティングはできませんが、オーディエンスシグナルを設定することで、AIがその情報を学習し、より高い精度でターゲティングを行う事ができるようになります。

広告表示オプション

電話番号や住所、サイトリンクなど自社ビジネスの詳細を広告とともに表示させるのが広告表示オプション。現在は以下の図のように、左サイドバーのアセットの項目から設定することができます。

例えば「電話」をチェックして+ボタンを押すと、以下のような画面が出てきて、設定ができるようになっています。

自社の情報を記載しておくことは広告効果を高める上で重要です。きちんと設定しましょう。

P-MAX実践のチェックリスト

ここまでを総括し、P-MAXを実践する際のチェックリストを作成しました。
実践の際には是非ご利用ください。


① 予算

☐ 1日あたりの広告費を決めている
☐ テスト配信と本番配信の予算を分けている

② コンバージョン設定

☐ 成果とみなすアクションを明確にしている(購入/問合せなど)
※CV設定はGoogle広告の『ツールと設定』→『コンバージョン』から事前に行う必要があります。
☐ CVとCV値のどちらを指標にするか決める
☐ 目標CPAやROASをどう設定するか判断している
☐ 顧客の獲得設定を確認した

 ③ アセット(クリエイティブ)準備

☐ テキスト・画像・動画など複数の素材を用意している
☐ ターゲットに合わせてアセットを分ける方針がある
☐ サイトリンクや電話番号などの補助アセットを設定した

④ オーディエンスシグナルの設計 

☐ 理想のユーザー像を言語化できている(誰に届けたいか?)
☐ 自社データ(Web訪問者/顧客リストなど)を活用できるか把握している
☐ Googleに渡す“ヒント”として、カスタムセグメントや既存データを用意している


P-MAXが変える広告運用|求められるのは”運用技術”ではなく”広告力”

ここまで見てきたように、P-MAXはAIの活用により広告運用にかかる作業負担を大きく削減することができます。今後、初心者でも広告を運用しやすくなり、P-MAXはますます一般化していくでしょう。

しかしその一方で、広告運用者の「運用技術」そのものによる差別化は難しくなっていきます。
では、これからの広告運用者に求められる力とは何なのでしょうか。

P-MAX時代に求められる「広告力」とは

P-MAX時代に必要なのは、手動での細かな設定や調整ではなく、広告そのもののクオリティと、それを届けるための戦略設計です。

つまり、

戦略設計 × クリエイティブ設計 = 広告力

という、広告本来の力が問われるようになるのです。

たとえば──

・オーディエンスシグナルが適切でなければ、AIはターゲティングを見誤ります。
・アセットグループに訴求軸が混在していれば、AIは誰に何が刺さったのかを学習しきれません。

P-MAXは“放置してOK”な自動運用ではなく、AIが学習・最適化するための“正しい設計”を与える必要があるのです。その意味で、広告運用者は「作業者」ではなく「設計者」であるべき時代が、すでに始まっています。

広告力の基礎を高める|Webマーケティングスクールのご紹介

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<BMPのプログラムご紹介>

Webマーケティングの基礎・用語解説など

SEO・コピーライティング

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まとめ

以上、P-MAXで広告運用がどのように変化するのかを解説してきました。

今回の内容を以下にまとめます。

・P-MAXはAI主導の次世代型キャンペーン
→キーワード・入札調整不要で、自動的に配信が最適化される“全自動型”広告。
リスティング広告とは設計思想が異なる
→人の運用スキルではなく、シグナルとアセットの設計が成果を左右する。
CVの「定義」と「目標設定」が鍵
→成果=CV/CV値の選択、目標CPA/ROASの有無、新規顧客優先の有無など事前に設計。
設定できるのはたった3項目|予算・CV・アセット
→自由度が少ない分、アセットの質と設計思想が成果に直結する。
・“広告運用”から“広告戦略”へ
→AI時代の広告では、運用技術ではなく、誰に・何を・どう届けるかの戦略設計=広告力が求められる。

P-MAXは、これからますます普及していくことが予想されます。

従来との違いを正しく理解し、運用の“考え方”をアップデートしていくことが、これからの広告運用には欠かせません。恐れずに使いこなして、P-MAXをあなたの武器にしていきましょう。

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